前回に引き続き、物議を醸した巨人のFA補償を語りたい。
と言っても今回は炭谷・丸のFA補強の話から逸れ、彼らとは別に巨人が獲得した二人のベテラン選手・中島宏之内野手と岩隈久志投手の話となる。
FA補強に絡んだ選手たち(内海、長野、炭谷、丸)については今回言及しないし、この記事で取り上げる二人は本題の補強には直接関係しない。
しかし中島・岩隈の獲得は、様々な理由により「巨人の補強政策のブレ」と受け取られ、内海や長野の放出を批判する材料の一つとなった。
そうした状況を考え、「今回のFA補償に対する批判」の背景を語る上で中島・岩隈にも言及すべきと判断。取り上げることとした。
それでは、批判を呼んだもう二つの補強を語るとしよう。
目次
元オリックス中島、巨人入り
昨年11月22日、巨人は元オリックスの中島宏之内野手を獲得した。
20代の頃には西武の看板選手として活躍し、五輪や国際大会への出場歴もあった。実績に関しては間違いなく一流選手と言えよう。
2013年にはその実績を買われ、メジャーリーグのオークランド・アスレチックスと契約。
が、故障やスランプにより結局一度もメジャーリーグでプレーできず。2年間マイナーリーグ(日本で言うところの二軍のようなチームが集まるリーグ)のみのプレーとなった。
その後帰国し、オリックスに入団。
故障による離脱を何回か経験するものの、レギュラーとして一定の戦力にはなっていた。
だが、「5年連続打率3割」「3年連続20本塁打」等の輝かしい記録を残した西武時代から衰えていることは否めなかった。
そして2018年オフ、契約交渉が決裂した中島はオリックスを退団。
そこに白羽の矢を立てたのが巨人・原辰徳新監督。
退団報道が流れるや否や速攻で契約交渉を行い、獲得に成功した。
原としては、自身が監督を務めた第2回WBC(※1)での中島の活躍が印象的だったのだろう。
だが、第2回WBCの中島は26歳。
そして2019年。中島は37歳になる。
前年に中島と2歳しか違わない当時の主力打者・村田修一内野手(※2)を「若返りのため」と解雇する中で、この補強は各方面から疑問視されていた。(※3)
元メジャーリーガー岩隈、巨人入り
昨年12月6日、もう一つの補強が発表された。
2018年オフまでメジャーリーグのシアトル・マリナーズに所属していた岩隈久志投手の入団が、巨人から発表された。
近鉄・楽天でエースとして君臨し、107勝を挙げた名投手である岩隈。
2012年からマリナーズに移籍した後も、中心投手として活躍。2015年にはノーヒットノーラン(※4)を達成。
間違いなく大投手。そんな投手の補強は、まさに大補強と呼ぶにふさわしい。と、言いたいところだが……
実はこの岩隈、2017年9月に故障箇所の手術をしている。
手術前を含めても2017年以降、メジャーで6試合にしか登板していない。
それどころか、2018年9月のマイナーリーグでの登板が手術後3回目の登板だったらしい……
中島の時よりは歓迎の声は多かった一方で、以下のような冷ややかな見方も。
ちなみにこの岩隈も、原率いる第2回WBCの代表メンバー。
岩隈は大会時、27歳。そして今年38歳。
原は昔の残像によほど憑りつかれているのか……?
結局、この補強の何が問題か?
ここまでで中島と岩隈の補強が疑問視されていることと、その理由を解説してきた。
この補強そのものの不安点をまとめれば、以下の通りか。
- 年齢が高めのベテランで、全盛期ほどの活躍を期待できない
- しかも直近でケガしている
「経験豊富なベテランの知恵や指導力が必要」という考え方なら、これらのリスクは必要経費としてそこまで問題にはならない。
が、巨人は中島と岩隈を獲得した後に二人の生え抜きのベテランをみすみす放出している。
そう、前回取り上げた内海と長野だ。
既に巨人には野球だけでなく、「巨人というチーム」「伝統球団・巨人の文化」を知り尽くしている投打のベテランが元々いたのだ。
そしてファンや同僚選手の信頼も厚い。
「実績はあるが活躍するか微妙な他球団のベテラン」を獲得しつつ、「完全に旬が去った訳でもなく、人気の高い生え抜きのベテラン」を放出。
こうした「矛盾」が、ファンの怒りを買ったことは間違い無いだろう。
まあ、ここら辺のファン感情は未だに「終身雇用信仰」が残り、「生え抜き選手」が尊敬されがちな日本ならではの光景かも知れない。
とは言え、若返りを図るでもなく他所からベテランを連れてきて、その後に功労者があっさり放出なんてなったら「何がやりたいのか分からん」となるのは正直仕方ないのではないのか?
少なくとも私には、原を中心とする巨人首脳陣の考えが全く分からない。
はっきり言って、過去のイメージで選手を獲っているようにしか思えない。
そしてその割を、功労者が喰っている。
故に私は一野球ファンとしてこの件に憤り、今回巨人ファンでもないのにこの件に言及した。
もっとも、原とて巨人を何度もリーグ優勝や日本一に導いている名将。考えはあるのだろう。以下のように、巨人サイドに理解を示すOBや記事も存在する。
元西武監督・東尾修氏の見解。「若手育成と補強の両立」という点から、巨人の方針を支持。
とは言え、ここまで述べた通りの理不尽な事態。下のように身も蓋も無い暴論が出るのもやむなしか?
とは言え結局……
巨人が優勝すれば、問題無い。
当然ではあるが、プロスポーツは結果が全て。
今回の補強……丸・炭谷のFA補強やそれによるベテラン2人の流出。他球団・メジャーからのベテラン獲得。
巨人が獲得した選手が活躍し、それがチームにタイトルをもたらすのであれば補強は成功だ。
もし巨人サイド、特に原監督がこの件で何らかの説明責任を果たすのであれば……
優勝、日本一という結果を出す以外にありえないだろう。
そうすれば私が書いたようなことは全て的外れでアホな素人の戯言として片づけられ、泣いて馬謖を斬った原は名将としての名声をさらに高めるであろう。
だがもしそれができないなら……まあ、色々ヤバいんじゃないすかね、原監督。
思わぬ形で十字架を背負ってしまった原巨人。その戦いぶりに色々な意味で目が離せない。
とりあえず、言いたいことは全部書けた気がする。
ってことで、それではまた。
おことわり
今回色々モヤモヤしてたのもあって若干今までよりトゲがある感じになってしまいました。
「活躍するのかよく分からない選手」扱いした岩隈・中島両選手のファン、今回まあまあボロクソに書いた原監督のファンにはお詫び申し上げます。
申し訳ございませんでした。
脚注
※1…2006年からメジャーリーグが主催している野球の国際大会。2006年、2009年と日本は優勝している。2009年に実施された第2回WBCでのイチローの↓のセリフは今でも語り継がれている。
※2…2012~2017年の間、巨人で主軸として活躍した打者。巨人入団前の横浜時代、2度のホームラン王に輝く。巨人退団後もプロ野球復帰を目指し、地方のリーグでプレーを続けていたがオファーを得られず。2018年オフに引退し、現在は巨人二軍コーチ。
※3…村田の解雇の段階で原は巨人監督では無いので、原は関係していない。よって、2017年と2018年で政策に差が出てもそれ自体は正直おかしい訳ではない。
※4…1試合の間で、1本のヒットも1点の得点も許さないこと。日本では1年に1人達成するか否かレベルであり、達成は後世に語り継がれる記録となる。メジャーリーグでこの記録を達成した日本人選手は、岩隈を含め2人だけ。(メジャー全体ではノーヒットノーランは299回発生)
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