前にもチラッと言ったが、私は一応コンビニ会社の本部社員だったりする。
とか思ってたら弊業界、なんだか炎上してますね。
私自身、2年間この世界で働いて来てこの業界について思うところ、許せない事柄はいくらでもある。
そろそろ、当事者として何らかの見解を示すべき時だろう。
下っ端と言えど本部社員である以上、見て見ぬふりをすることは許されない。
下っ端なりに思うところを述べ、この業界が抱える闇を白日の下にさらす。
それが本部社員として私ができる最低限の、
“弊業界に不信のまなざしを向ける社会に対する説明責任”であり、
“今現在苦しんでいるフランチャイズのオーナーへの謝罪”であり、
“そして、不幸にも斃れていったオーナーやその家族への償い”であると考えている。
とりま、消されること覚悟で色々書いてみる。
目次
全ては本部の利益のために?
それをあなたは考えたことがあるだろうか?
半分?
いやそんなに多くはない。
3分の1くらいは……
普通に考えればそうだろうね。
まぁ違うけど。
正解は……売上高の1~2%、多くて3~4%くらい。
1500万円売り上げても50万円(酷けりゃ15万円くらい)程度しか、オーナーの手元には入ってこない。
いやマジで。
嘘だと思うなら俺がいる直営の損益計算書でも見せようか?
出来ないけど。
じゃあ、なぜそんなことになるのか?
その謎を探るためにコンビニ本部が課す、「異常に高額なロイヤリティ」「経費の押し付け」について語るとしよう。
偽りの「共存共栄」——かくてオーナーは搾取される
どっかの大手チェーンは、オーナーとコンビニ本部の「共存共栄」を謳ってるらしい。
さて、そのチェーンの会計システムはこんな感じ。
- 月間の売上合計が決まる
- そこから売れた商品の原価が引かれる←分かる
- 売上総利益が残る←分かる
- 売上総利益の50~60%を本部が「ロイヤリティ」として回収
少なくない人はここで
「それっておかしくねえ? だって本部の方が取り分多いじゃん」
と思うはず。それは間違っていない。
しかし真に恐ろしいのはここから。
さっきの解説で、「バイトの人件費」「廃棄になった商品の経費」が登場してないことにみんな気付いてくれたかな?
そう。
今盛んに問題になっている人件費や、フードロスとして非難の対象になってる食品の廃棄。
これらは全て、オーナーが受け取る分の利益の片割れから支出されるのだ。
(一応本部のフォローをしておくと、多少は負担するチェーンの本部もあるらしい。といっても、2割くらいらしいが)
ていうか、店の経費はだいたいオーナー持ちだ。
図で表すとこんな感じである。あまりにひどい。
そうこうするうちに、オーナーが受け取る利益は売上のうちのカス程度になる。
まあ、簡単な条件さえ満たせば定額でオーナーの口座に一定額が入るシステムはあるので必ずしも「カス程度」の給料で凌がないといけない訳ではないが……
※ちなみに↑のシステムで得られる金の相場は月40万円前後が相場。参考までに……1日の1店当たりの平均売上は最大手の会社で61.3万円ほど。
「共存共栄」ってなんだよ……
その結果、どうなるか?
上の話をまとめると、
- 本部は店の総利益の半分以上を「そのまま」持っていく
- オーナーは本部が持って行った残りの利益から、人件費等の経費を出す
ということになる。
(ここで「本部がそのまま利益を半分持っていく」というポイントを覚えておこう。ただ一旦そこは離れる。)
これを言い換えると、
本部は各店の経費について理論上、ほとんど何の責任も持たない
とも言い換えることが出来る。
つまり本部は、
- どっかの店が誰も来ない夜中にいくら電気代を浪費しようが
- どっかの店が大して客も来ないのに無駄に商品を入れ、廃棄を出しまくろうが
- どっかの店が大量にバイトを雇いすぎて人件費がめちゃくちゃ増加したとしても
全く金銭的には痛まない。なぜなら、本部は経費を店に押し付けているからだ。
そしてここで、
「本部は売上総利益の半分をそのまま持っていく」
ことを思い出そう。
すごい極端な話、
- 0時~24時の間に100円でも売上が立てば
- オーナーからすれば無駄に30個発注したうちの1個でも売れれば
例えその店が大赤字であったとしても、本部は儲かる仕組みになっているのだ。
だからこそどこかの腐ったチェーンは、大阪でオーナーが直接的行動に出て、そのオーナーが広く世間的な支持を得るに至るまで、「24時間」に執着した。
醜くも、そのオーナーから「違約金」なるものさえ巻き上げようとした。
騙されてはいけない。
「社会的インフラだから」
「流通の雇用確保」
なんてのは全部綺麗事で、
全ては本部の金のためだ。
「じゃあオーナーがやめりゃよくね?」
それはあるかも知れない。
事実、あるオーナーが苦渋の決断の末に経営から手を引いたようだ。
しかし、多くのオーナーがそれを躊躇する事情がある。
それは、開店時に本部がオーナーに多額の金を貸し付けているからだ。
言い換えると、
オーナーは本部に多額の借金をしているから辞めることが出来ない
ということだ。
※厳密に言えば「店の負債=100%本部からの貸付金」ではないが、話を単純化するためにこう説明する。そしてこの説明で言い過ぎではないほど、店の負債に占める本部からの貸付金の割合は大きい
その「借金」を返すには利益を積み重ねる必要があるが、先述した通りオーナーが得る利益は雀の涙。
経営が軌道に乗って「借金」がマイナスとなり、その分がオーナーの給料に加算されるケースもないわけではない。
……だが、そこに行くまではてどれくらいかかるのやら。
この人手不足でバイトもろくに雇えず、人口減少で客が増える見込みもない世の中で。
店によっては売上が低迷した結果利益を確保できず、「借金」がドンドン膨らんでいる所も存在するとか。
そしてその「借金」が存在するが故に、なかなかオーナーをやめられないのが実態だ。
売上の大部分をかすめ取られる上、負債と言う鎖で繋がれる……
これが、コンビニオーナーの実態だ。
だから、どれだけ人手不足だろうが、本部から理不尽な条件を提示されようが、やめにくくなってしまうのだ。
あとがき
こういう話をすると必ず、
「んなモン自己責任だろ???」
とかほざく馬鹿な輩がいるが、考えて見て欲しい。
普通こんなこと知ってるか?
「契約」の名の下に雁字搦めにされ、体を壊したり、挙句命を落としたりした人々やその家族を前にそんなことを言えるか?
すべては本部が金のために人の命や倫理観を顧みずに、突き進んだ結果生じた悲劇だと私は考える。
変革すべきは本部の方だ。
コンビニは今や生活に欠かせないもので、確かにインフラとすら言える。
だからこそ、今この時代に持続可能なモデルを構築し、関わる全ての人が過度な負担を背負うことがないようにしなければいけない。
(もちろん私とてその責任は免れないだろう、絶対に)
この間に少なくない命が失われたことは忘れてはいけない。
それでも各大手チェーンがようやく「24時間営業の見直し」を決断し始めているのは、遅すぎるとは言え悪いことではない。
……と、思いながらN〇K「ク〇ーズアップ現代」を見る俺であった。
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