―――穏やかな昼下がり。そいつは突然、やってきたんだ。
「銀行は1円でもお金が合わないと帰れない」
そんな都市伝説をアナタは聞いたことがないでしょうか?
結論から申し上げますと、それは都市伝説なんかではありません。
事実、銀行ではお金がきちんと合うか、合わない理由が徹底的に解明されるまではマジで帰れません。
1円合わなかったら本当に支店のごみ箱や雑誌箱をひっくり返して
「何処かに1円が落ちてないか?」
「機械の隙間に挟まってないか?」
みたいなことを何時間もかけてやります。なので帰れません。
僕も銀行に入る前までは
「誰か1円補充すれば問題解決じゃんwww馬鹿だろwww」
とか思いましたが、馬鹿は僕でした。
無理だわ。あの雰囲気で補填するとかマジ無理。
という訳で今回は、実際に僕が経験した「銀行の金が1000円合わない事件」について、ちょっと語ろうと思います。
目次
まず始めに:銀行には三大事務事故というものがある
この呼び方をしてるのはうちの銀行だけかもしれないですが、銀行には三大事務事故というものがあります。
この三大事務事故はマジで起こしてはならないミスで、1年にたった1回起こしてしまっただけでも大事件として全国の支店に周知徹底がされます。
事務”ミス”ではなく、事務”事故”と言われている辺り、そのヤバさが窺えるでしょう。
「1円合わない」という事件も三大事務事故に該当して、「1円合わない」は「出納事故」と呼ばれます。
ここではちょろっとその三大事務事故をご説明しようと思います。
①為替未送信・誤送信
為替未送信・誤送信とは何かというと、
お金の振込をしていなかった、もしくは間違った所に送ってしまった
ことを為替の未送信・誤送信と呼びます。
例えばお客さんから振込の依頼書を受け取ったんですが、処理するのを忘れて放置してしまい、次の日になってしまった……。
なんて時は為替の未送信と呼ばれるやべぇ事故になります。
もしくは、Aさんに振り込むよう指示されているのに、Bさんに間違って振り込んでしまった!
なんて時は為替の誤送信と呼ばれるやべぇ事故になります。
私の先輩で、為替の未送信(振込を忘れ)を起こしてしこたま怒られ、次の日にその振込をやろうとして誤送信を起こした上で自作のポエムが見つかるというやべぇ奴が居ましたが、この事故も1年に1回起きたら本当に大事件です。
②口座相違
口座相違とは何かというと、
という事故のことを口座相違と呼びます。逆(間違って入金してしまった)もまた然りです。
これは他の事務事故に比べて発生頻度が低い事故ですね。ただ、他のと同様、これをやってしまった時は大問題です。
海外の銀行の事例では7億円を間違って他人に入金してしまったことがあるとかなんとか。
③出納事故
そして本題の出納事故です。
「すいとうじこ」と読みます。
出納事故とかつまり、
という事故になります。
多かろうが少なかろうが、1円でも銀行の金が合わなかったら事故になります。
ってなっても出納事故ですし、
ってなっても出納事故です。そして今回語るのはこの出納事故になります。
事務事故は大体業務終了後に発覚する
事務事故というのは、大体業務終了後に発覚します。
何故なら、我々銀行員は業務終了後にお金の精査をしているからです。
午後3時に銀行はシャッターを閉めますが、その後もバリバリ仕事をしています。
そして、勘定の精査(お金を合わせる)作業をしているのが大体15:45分辺りなので、
やっべぇ事件は大体そのぐらいの時間で発覚します。
”1000円合わないんです” その一言が、支店を震わせた
今でも覚えてるんですが、午後4時半頃でした。
為替グループっていうのが存在するんですが、午後4時頃から何やらざわざわしてるんですよね。
なんか怪しい雰囲気は漂ってたので、勘のいい人たちは
ってわかってて、動き始めてました。
でも解決できるかな?と思ってたので静観してたのですが、4時半頃にはついにやばい感じになり始めたので続々集まる我々。
そして話を聞いて行ったら、想像の5倍はヤバい事故だったわけです。
曰く
「”1000円”どうしても会わないんです」
とのことでした。
PM4:00 ここで食い止めれば何とかなる
為替グループが怪しい動きをしていたので、「1000円合わない」発言の前に上の人達は動いてたみたいです。
三大事務事故。その言葉が頭をよぎりましたが、一応その日のうちに原因が判明して、ちゃんと帳尻を合わせることが出来ればギリギリ事故にはならないので、希望を持ってました。
多分原因は某コンビニ
そしてどうやらある程度の原因は分かっていたそう。
どうやら犯人(正確にはこっちが悪いんだけど)は某コンビニ店らしいのです。
担当者の子が、両替をしに来たコンビニ店員に、間違って他のお客様が引き出した現金を上乗せして返してしまった可能性がとてつもなく高いとか。
そのせいで現金が合わず、あたふたしていたのだとか。
でも原因が分かったのなら後は簡単。多く払ってしまったのでお金を返してくださいと、頭を下げに行けばいいだけです。
一見落着一見落着と、安堵の表情を見せる私たちですが、そんな簡単に行くわけがないんだよねぇ……。
PM4:30 お金を返しに来てくれたコンビニ店員
監視カメラとか、当時の状況とかを聞いてほぼほぼ間違いないだろうと原因を断定した辺りで、なんと、先方のコンビニから電話がかかってきていたらしいのです。
とのこと。一見落着だ……と心底安堵していた為替グループ。
支店のナンバー2なんて顔面神経痛にでもなるんじゃないの?ってぐらいの顔をしてたので、本当にうれしそうでした。
ただ、そんなにうまくいかないのがこの世の中というもの。
現在の過不足はマイナス3万9千円。
あとはその3万9千円が回収できれば無事大団円だったのですが……。
コンビニ店員が持ってきたのは、なんと3万8千円でした……。
PM5:00 そして出納事故へ
そして冒頭の、「”1000円”合わないんです」に繋がり、支店全員が巻き込まれることに。
もうこうなったら自分の目の前にある仕事なんて一切関係ないんですよね。
その千円は一体どこにあるんだ?
というのを支店全員でごみ箱からロビーにおいてある雑誌からなにからなにまで全部ひっくり返して調べ始めます。
伝票も、一枚一枚精査して間違いがないかを徹底的に調べ尽くします。
ぶっちゃけみんな分かってるんです。間違いなくその1000円は見つからないということを。
”現金その場限り”という言葉がある通り、もう現金はその場を離れているので、検証のしようなんて無い訳です。
まぁでもぶっちゃけコンビニに多く行ってるんですよね。間違いなく。
コンビニ店員がパクったのか、気が付かず1000円を持って行ってしまったのか、分かりませんが、間違いなくコンビニにその金は行ってるはずなんです。
なので支店内で1000円が見つかる訳がないんですよ。
ですが、やる訳です。無駄と分かってても、やらないとダメなので……。
そして支店内をくまなく探すこと4時間以上。
1000円はついぞ、見つかることなどありゃしませんでした。
まとめ:銀行はマジでお金が合わないと帰れない
金がちゃんと合わないと帰れないっていうのは都市伝説でも何でもなく、マジなことであることを本当に痛感しました。
本当に1円合わなかったら銀行員は帰れません。
なので、絶対に
とか言わないように!めっちゃ働いてるから!銀行員!
寧ろ15時以降とか戦いだから!
金があってるか死ぬほど入念に調べてるから!
さて、今回の記事いかがだったでしょうか。
これはPart1になるので、後々また続きを語らせていただこうかと思ってます(笑)
さて、今回はこの辺りで失礼をば!
次回Part2
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